近似した物理特性を有する微粒子混合物から、目的金属微粒子を選択的に抽出する人工タンパク質
Advantages
- 既存の選鉱工程で回収しきれない、微細化した鉱物微粒子を回収可能
- “結合モジュール”のみを目的物質に応じて変更できる汎用的なコンポーネント
- 目的粒子との選択的結合は、ファージディスプレイ法によりペプチドライブラリから獲得
- 吸着・凝集・回収の“迅速な”ハンドリングが可能
Background and Technology
非鉄金属などの生産において、製錬に先立って、目的となる金属を含んだ鉱物とそれ以外の鉱物を選別する工程が重要となる。選鉱工程では、鉱山で掘り出された鉱石塊を粉砕して単体分離し、次いで粉砕産物(複数の鉱物粒子の混合物)から特定の鉱物粒子をその物理特性(比重,磁性,表面特性など)に応じて分離回収し、他の経済価値のない鉱物粒子から選別する。この工程の選別精度を向上させるために、すべての粒子が単体分離するように十分に細かく粉砕する必要があるが、その結果粒子径が小さくなりすぎたものも生じる。こうして微粒子化した目的物は回収することができず、その損失は鉱物全含有量の10%にも及び、効率・環境汚染の両観点から改善が求められる。
課題解決のために、既に現状においても、対象の鉱物粒子のみを選択的に凝集させて回収するために凝集剤等を使用し、目的とする微粒子の回収を行っているが、これまでの技術では目的物のみを効率よく回収することはできなかった。
本技術は、上記課題解決のため、近似した物理特性を有する多種多様な微粒子混合物の中から、目的とする微粒子のみを選択的に、且つ精度の高い回収能を発揮するプロセスを確立できる技術を検討し、以下のコンポーネントからなる人工タンパク質を開発した。
(1)特定表面に対してのみに親和力を示し、結合するペプチド/タンパク質(結合モジュール)
(2)溶液中で相互に凝集するペプチド/タンパク質(凝集モジュール)
(3)溶液に可溶化させるためのタンパク質(可溶化モジュール)
(4)目的粒子回収の工程に合わせ可溶化モジュールを除去するためのペプチド(切断部位)
Data
人工タンパク質を構成するコンポーネントとして、結合モジュール(既知の黄銅鉱結合ペプチド)ー凝集モジュール(疎水性タンパク質)ー切断部位ー可溶化モジュール(可溶性タンパク質)を用いた凝集結果。凝集モジュールと可溶化モジュールの間には部位特異的プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)による切断部位を挿入し、任意のタイミングで可溶化モジュールを切断・除去することで、黄銅鉱を回収可能な構造を設計した。黄銅鉱微粒子(10 mg/ml,粒径 3-4 μm)。
Expectations
現段階:人工タンパク質コンポーネントによるコンセプトの実証が完了。
次段階:①目的粒子の選鉱能実証など、汎用性実証(進行中)
②使用目的に合わせた最適プロトコル・プロセスの確立
③量産処理化プロセス、装置の確立
技術導入、または上記の実用化/開発コラボレーションに関心のあるパートナー企業を募集しています。先ずは、技術の詳細説明とディスカッションから、スタートさせていただければ幸いです。
Patent
- 日本特許出願済み
Researchers
国立大学法人北海道大学 大学院工学研究院 准教授 中島一紀
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