マウスピース型の洗浄装置であり、患者自身による自宅での利用を想定
Advantages
- 歯科用3Dプリンタを利用し、患者自身の歯型からオーダーメイドで作成できる
- 在宅での口腔内洗浄が可能になり、患者と医療機関双方の負担を軽減
- 洗浄液が口腔内に流入しないため、誤嚥のリスクが低減
Background and Technology
骨粗鬆症治療に有効なビスホスホネート製剤やデノスマブなどの骨吸収抑制薬は、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)という副作用を引き起こす可能性がある。MRONJの発症率は1,000人に1人程度であり、8週間以上の骨露出で診断され、治療は可能であれば外科的切除が行われる。しかしながら、腐骨と正常骨の境界が不明瞭なため過剰切除や取り残しのリスクがあり、そのため外科的切除の前に定期的な洗浄による保存的療法を行い腐骨の分離を促して切除ラインの決定が多くの場合行われる。またMRONJを発症する患者の多くは高齢者であり、全身的な問題から外科処置が困難な場合や患者が希望しない場合、外科的切除に代えて定期的な洗浄による保存的加療を行い、腐骨分離を促進することで治癒を図る方法が選択される。保存療法における創傷部の洗浄は、自宅での含嗽と専門家による定期的な洗浄が主流だが、含嗽では残留食渣の除去が難しく、頻回な来院が必要となり、患者(またその介護者、施設職員)と医療機関双方の負担が大きい。この負担を軽減するために口腔洗浄器が開発されているが、従来品は口腔内全体を対象としており、創傷部の食渣除去が不十分であるという問題があった。また、洗浄液が口腔内全体に流入するため、嚥下機能の低下した高齢者や障害者等では誤嚥のリスクも懸念されている。
そこで、本研究者は口腔内の局所的な洗浄・吸引を患者自身が自宅でできるマウスピース型の口腔洗浄装置を開発した。具体的には、まず口腔内スキャナーで歯型データを取得した後、3Dプリンタを用いて創傷部を含む歯列のスプリントを作製する(図1)。続いて、スプリント内側に送水部と吸水部を加工しマウスピース内部で洗浄と吸引を可能にすることで(図2)、洗浄液のマウスピース外への流出が防止できる。このような洗浄水の吸引機構があるため誤嚥を防ぐことができ、座った状態でも使用が可能となることから、嚥下機能の低下した高齢者や障害者を含め患者自身による自宅での洗浄が可能となり、患者と医療機関の負担が大幅に軽減され、患者のQOLも向上することが期待される。

Data
- 顎骨壊死モデル模型を用いて、試作した本発明の洗浄装置の性能試験を行った(図3)。残留食渣に性状が類似している10倍粥を用い、その洗浄を確認したところ、食渣はほとんど残留することなく洗浄できることを確認した。

Future Research Plans
- 本発明の洗浄装置についての、さらなる安全性の検証試験が進行中。
- 安全検証後は装置の治療効果評価を計画している。
Expectations
テックマネッジ株式会社では、長崎大学からの委託により、本発明のライセンス導入による製品化・実用化を検討していただける、本発明にご興味のある歯科材料・歯科器具を開発されている企業様を募集しています。研究者と直接のご面談によるお打ち合わせも可能です。ご希望がございましたら何なりとご相談ください。
また、長崎大学との秘密保持契約締結による未公開データ等の開示も可能ですので、お気軽にお尋ねください。
Patents
特許出願中(未公開)
Researchers
山本 英幸 助教 (長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科 口腔インプラント学分野)
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