堆肥化や畜産の施設に由来のアンモニアガスを微生物により硝酸に変換させ高濃度に蓄積するクリーンな硝化システム
Advantages
- 畜産現場の悪臭源であるアンモニアガスを、低コストで捕集し別用途に転換できる
- 高濃度硝酸溶液とすることで、その利用先(藻類培養施設など)への輸送コストを低減できる
- 持続可能な資源循環型社会の実現に貢献
Background and Technology
堆肥化や畜産の施設はアンモニアガスの主要な発生源であり、臭気抑制と窒素資源循環の観点から、堆肥や畜産施設に由来のアンモニアガスを回収・利活用する技術が求められている。アンモニアガスを無毒化する技術として、硝化細菌を利用しアンモニアを硝酸に変換する技術が既にあるが、従来の方法では得られる硝酸濃度が低く、得られた硝酸を利活用するにしても輸送などの観点から経済的に効率が悪い、という点が問題であった。また、硝酸濃度を高めようとするとpHが下がり、硝化細菌がダメージを受け結果的に収量が上がらないため、この問題解決のための別のアプローチ方法が求められていた。
本研究者は、これらの問題を解決するために研究を進め、排ガス中のアンモニアを硝酸に高効率変換し、その硝酸を高濃度に蓄積させる硝化システムを開発した。このシステムでは、(I) 高浸透圧環境に耐える硝化菌の活性維持、(II) アンモニウムと硝酸の共蓄積による至適pHの維持、(III) 中和助剤の循環利用によるpH制御、を特徴とし、そのためにpH制御と細菌の馴化を行うことで、従来は数百mg/L程度に留まっていた硝酸濃度を数万mg/Lにまで高めることが可能となった。
この技術により、堆肥化プロセスから生じる廃棄物を、医薬品や健康食品の原料となる高付加価値な藻類の培養に活用できる窒素源として再利用することが期待される。また、従来技術と比べて大幅に高濃度の硝酸を効率的に蓄積できるため、藻類の生産効率を高めると同時に、経済的なメリットも大きくなる。また、この高度な微生物技術は堆肥化施設・畜産施設だけではなく、メタン発酵処理施設や半導体製造工場など、アンモニア排水を処理する他の施設にも導入可能であり、廃棄物を利用する持続可能な資源循環型社会の実現に貢献できる。

Data
- 下水処理施設から採取したアンモニア酸化細菌(AOB)及び亜硝酸酸化細菌(NOB)を含む硝化菌コンソーシアムを、亜硝酸イオンと硝酸イオンが高濃度に蓄積する環境で馴養し、その後アンモニア水の供給を行ったところ、硝酸イオン濃度が上昇し、約29,000 mg/Lもの高濃度の硝酸を蓄積できることを確認した。また、AOBとNOBはいずれも高活性で硝化反応を進行することができた。
Current Stages & Future Research Plans
Current Stages & Future Research Plans
- 高濃度のアンモニアや硝酸が存在する環境において硝化細菌が高活性を維持するシステムを構築した。
- 今後、高濃度硝化を実現するため、電気透析法を併用した硝酸の選択回収や、アンモニア供給変動時のシステム安定化操作などを確立する予定。
Expectations
テックマネッジ株式会社では、長崎大学からの委託により、本発明に関して、社会実装に向けて共同研究をご検討いただける堆肥処理施設や排水処理施設の開発をされている企業様を探しています。また、本プロジェクトテーマに関係するグラントに対し、本研究者と共同で申請をしていただける企業様も歓迎いたします。本発明/プロジェクトに関し、研究者との直接のご面談によるお打合せも可能です。
Patents
特許出願中(未公開)
Researchers
小山 光彦 准教授 (長崎大学 環境科学部 総合生産科学域)
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