代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)の患者血清中のFibulin3やGPNMBを対象とした肝癌の
発症リスク評価のための直接的なバイオマーカー
Advantages
- 微量の血清サンプルで検出が可能なうえ、5年以内の発癌を良好に予測できる
- 既存の指標やマーカーと組み合わせることで、より発症リスクの高い患者の絞り込みも可能
Background and Technology
肝癌は日本で年間約4万人が発症し、2万5千人が死亡する悪性腫瘍であり、その患者の多くは慢性肝疾患を有している。慢性肝疾患の中で最も罹患患者数の多い疾患は代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)はであり、本邦では約4人に1人が罹患している。罹患患者数は多いがMASLDからの肝発癌率は年間0.1%未満であり、肝癌サーベーランスとして腹部エコー検査や血液検査などを対象患者全員に対し高頻度で行うことは、コンプライアンスや費用対効果の観点から望ましくない。MASLDの患者のうち、FIB4-indexが1.3未満の患者が肝癌を発症することは実際にはほとんどないが、FIB4-indexだけでは、発がんのリスクが高いグループの絞り込み効果が低く、さらなる絞り込み指標となるバイオマーカーが求められていた。
そこで本研究者らは、MASLD患者における肝癌発症と相関するバイオマーカーを探索した結果、血清中のFibulin3とGPNMBを見出した。Fibulin3、GPNMB及びそれらのmRNAは、肝線維化が進展しているMASLD患者において有意に増加しており、これらの値が高い患者は発癌率が非常に高いことが明らかになった。また、これらのバイオマーカーに対しAFPやFIB4-index等の既存のマーカーや指標を組み合わせることにより、詳細な検査が必要な患者のスクリーニングも可能になることが期待される。
Data
- MASLD患者50例の血清中のエクソソームを用いてプロテオーム解析を行い、肝線維化の進展患者において有意に増加しているタンパク質としてFibulin3を見出した。
- MASLD患者467例の肝生検時の保存血清より、Circulex Human Fibulin-3/EFEMP1 ELISAを用いて血清Fibulin3を、およびHuman Osteoactivin/GPNMB DuoSet ELISAを用いて血清GPNMB値を測定し、肝発癌との関連を確認した。
- MASLD患者の血清Fibulin3値またはGPNMB値を用いて5年以内の肝癌の発症に関するROC曲線を作成し、Youden indexを用い算出した閾値からAUROCを計算した。その結果、いずれのバイオマーカーを用いた場合でも3年以内の発癌を予測できることが確認された。
Expectations
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Publications
Sakane S., Hikita H. et al. Hepatol. Commun. (2024) 8(6):e0448.
Patents
PCT/JP2023/022224(WO2024/004675として国際公開済み)
Researchers
疋田 隼人 先生 (大阪大学 大学院医学系研究科 講師)
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