メタボリックメモリーとして体内に蓄積された高血糖状態を推算する方法
Advantages
- 簡便性:1回の採血のみでメタボリックメモリーを定量評価できるため、実臨床での活用が可能。
- 早期診断:初診の糖尿病患者に対しても過去に体内で蓄積された高血糖状態を推算できるため、早い段階での合併症リスク予測が可能。
Background and Technology
糖尿病患者などにおいて、高血糖状態が長く続くと体内の様々な細胞や組織において酸化ストレスが増加し生体分子が損傷や変性を受ける。このような細胞レベルでの変化は後に血糖状態が正常値に回復したとしても完全には元に戻らず、身体に記憶されるため、これを「メタボリックメモリー」と呼び、糖尿病関連の合併症リスクを長期的に高め続けると言われている。このことは、糖尿病診断を受けた際の初期治療の重要性を意味し、初期の血糖コントロールを適切におこなうことで、メタボリックメモリーの影響を最小限に抑えることができると考えられる。また、早い段階でのリスク予測と適切な初期治療は、糖尿病患者の長期的な合併症のリスクを低減することが期待できるため、糖尿病治療におけるメタボリックメモリーの把握は重要である。
本研究者らのグループでは、これまでに被験者の過去10年間の経時的なHbA1c値の推移を基に、メタボリックメモリーを推定する算出モデルを考案してきた。具体的には、被験者におけるHbA1c値が標準値である6%を越えた期間の推移曲線下面積(AUCHbA1c≥6%)に基づいた、高血糖状態の蓄積と腎機能低下との量的関係性を、非線形混合効果モデルによって数式化したものだが、この従来方法による評価の場合は長期間の過去の詳細なHbA1c値の推移の情報が必要であり、臨床応用には実用的でないという問題があった。
このような背景を踏まえ、本研究者らは新たに、被験者の血液中のアミノ酸濃度を利用する簡便なメタボリックメモリーの定量評価方法を考案した。具体的には、被験者の血中アミノ酸濃度を測定し、特定のアミノ酸のグループにおける各アミノ酸の重量比に着目することで、たった1度の採血のみで過去の高血糖状態の蓄積であるメタボリックメモリーを精度よく予測することができる。また、この予測結果から将来発症しうる合併症等のリスクについて予測することが可能となる。
Data
- 血中アミノ酸を対象としたキャピラリー電気泳動/質量分析法(CE/MS)により、180余名分の2型糖尿病患者のデータを収集し、アミノ酸重量比の情報から機械学習法(ニューラルネットワーク/多層パーセプトロン)によりAUCHbA1c≥6% の値を推算できることを確認した。
Expectations
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Publications
論文投稿中
Patents
国内特許出願中(未公開) *熊本大学からライセンス可能
Researchers
鬼木 健太郎 准教授 (熊本大学 大学院生命科学研究部 薬物治療学分野)
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