肝類洞内圧の亢進に伴い活性化するインテグリンαV‒CTGF経路の抑制剤
Advantages
- フォンタン手術後や肝炎鎮静後の肝硬変などの類洞内圧の亢進を伴う患者が発症する肝発癌をターゲットとした初めての治療・予防薬。
- CTGFは類洞内圧を反映したバイオマーカーでもあり、コンパニオン診断への応用も期待できる。
Background and Technology
ウィルス性の慢性肝炎や肝硬変では、肝細胞死を起点として線維化が進行し肝発癌に至る機序が解明され、肝細胞死を抑制して肝病態を抑えることが可能になっている。しかし、この肝細胞死を抑制しても肝病態が悪化する症例があり、その機序や原因は不明であったが、類洞内圧が亢進していることは知られていた。また、フォンタン関連肝疾患やバッドキアリ症候群などのうっ血性肝障害でも、肝臓の炎症は見られないが類洞内圧が亢進し、線維化や肝発癌を引き起こすことが知られている。
そこで本発明者らは、類洞内圧の亢進により物理的刺激を直接受ける肝類洞内皮細胞に着目し、類洞内圧の亢進による肝発癌の発症機序の解明に取り組んだ結果、類洞内圧の亢進により発症する肝発癌には結合組織増殖因子(CTGF)が深く関与していることを見出した。CTGFは、肝組織の線維化や肝癌細胞の増殖に関与することは以前から知られていたが、肝癌の発症自体にも関与することが今回初めて明らかになった。メカニズムとして、内圧の上昇による物理的な刺激を受けた肝類洞内皮細胞では、細胞表面のインテグリンαVを介してYAP/TAZが活性化することでCTGFの発現が上昇し、その結果として肝類洞内皮細胞の毛細血管化や肝星細胞の線維化関連タンパク質の産生が増強され、肝線維化や門脈圧亢進をきたし、肝癌を発症すると考えられる。CTGFの働きを抑えることで腫瘍形成率も低下することから、CTGF阻害剤およびインテグリンαV阻害剤は肝発癌の治療や予防に有用な薬剤候補になると期待される。
また、類洞内圧の亢進により発症する肝発癌のバイオマーカーは確立されておらず、臨床的にもバイオマーカーの探索が望まれていた。今回、本発明者らは類洞内圧の亢進に伴い肝臓組織と血清中において発現が上昇するタンパク質を同定し、その中でCTGFの発現も上昇していることを明らかにした。そのため、CTGFは肝発癌のバイオマーカーとして、治療/予防のためのコンパニオン診断用マーカーとしての利用も期待される。
Data
- 下大静脈を部分的に結紮(partial Inferior Vena Cava Ligation; pIVCL)することでうっ血肝モデルマウスを作製し、そのシングルセル解析を行ったところ、対照群と比較しpIVCL施術群では肝類洞内皮細胞においてYAP/TAZの標的遺伝子の発現上昇が認められ、 CTGFの発現が最も上昇していた。
- 内皮細胞特異的にCTGFをノックアウトしたマウスを作製し、同様にpIVCLにより類洞内圧を亢進させたところ、ノックアウトマウスではpIVCLによる肝線維化・門脈圧亢進が有意に低下し、また同じく肝腫瘍形成率も有意に低下した(次図)。

- pIVCL施術後にインテグリンαV阻害剤を投与するとCTGFの発現が低下し、肝線維化・門脈圧亢進が有意に低下した(次図)

Expectations
テックマネッジ株式会社では、大阪大学からの委託により、本発明のライセンス導入による肝発癌の治療薬や予防薬、及びそれらのコンパニオン診断薬の開発をご検討いただける製薬企業様、診断薬企業様を探しています。本発明/プロジェクトに関し、研究者との直接のご面談によるお打合せも可能です。そのほか、ご不明な点等ございましたら、どうぞ何なりとご相談ください。
Patents
特許出願済み(未公開)
Researchers
疋田 隼人 講師(大阪大学 大学院医学系研究科 消化器内科学)
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