アモルファス酸化ガリウム層内部の酸素空孔の分布制御によるReRAM
Advantages
- 300℃超の高温に耐えられる抵抗変化型メモリ素子であり、極限環境下において動作させるメモリ集積回路やAIハードウェアに用いる脳型コンピュータ素子へ応用できる。
- 高温環境下でも安定してその特性を維持し、長時間にわたってメモリ機能が保持されることを確認。
- 4端子素子を用いて、連合学習の一種であるパブロフ型条件付けを実装し、本発明により高次の生体神経機能の模倣が可能であることを確認。
- 下地基板を選ばすに素子構造を多層に積層できる。
Background and Technology
自動車、航空宇宙、IoTなどの分野では、過酷な環境下でも安定動作する次世代メモリ素子としてReRAMが注目されている。特に金属酸化物を利用したReRAMは、内部の酸素空孔や酸素イオンの移動により不揮発な抵抗変化を示し、その構造のシンプルさや低消費電力性から活発な研究開発が行われている。従来、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ハフニウムなどの材料を用いた、電圧印加により導電性を示す部分がフィラメント状に繋がることで抵抗が変化する「フィラメント型」のReRAM研究が主流だった。しかしながら、フィラメント型では高い抵抗比を実現できる一方で、フィラメントの形成位置やサイズなどが制御できないため、性能のばらつきや長期的な信頼性に改善の余地が残されていた。
本研究者らは、「非フィラメント型」の新たなReRAM開発に成功した。具体的には、電極間に酸化ガリウムのアモルファス薄膜を作製したキャパシタ型のReRAMを用い検証した結果、酸素空孔の分布状態が変化する非フィラメント型のReRAMとして機能することが確認された。また、この機能は300℃以上の高温環境下でも安定して維持され、長時間にわたってメモリ機能を保持できることが実証された。
また、本技術により高次の生体神経機能である生体神経シナプス構造・機能を模倣することも可能である。生体神経シナプスでは、介在ニューロンとのシナプス接続やニューロモジュレータにより可塑性が調節されており(ヘテロシナプス可塑性)、本技術を4端子素子と組み合わせることで、同機能を人工的に模倣できることを実験的に確認した(詳細は後述)。
さらに本技術の場合、下地となる基板を選ばすに素子構造を多層に積層できるため、3次元集積回路化にも適しており、高温下や航空宇宙・耐放射線などの極限環境下において動作させるメモリ集積回路のほか、AIハードウェアに用いられる脳型コンピュータ素子等への応用が期待される。
Data
- ワイドギャップ半導体としても知られている酸化ガリウムを、パルスレーザー蒸着法を用いて数十nm厚の還元性アモルファス薄膜に生成し、上部電極(Pt)と下部電極(ITO)で挟んだキャパシタ型のReRAMを作製した。
- 電流-電圧特性を計測したところ、上部電極への正/負電圧の印加に応じて出力電流が変化する「逆8の字形ヒステリシス特性」が得られ、メモリ機能を有することが判明し、さらに600K(300℃超)の高温でも安定した抵抗変化を示すことを確認した(下図)。また、高温耐性を有する酸化ガリウムと同様に酸化チタンでも酸素空孔分布型の抵抗変化特性を用いれば高次の生体神経機能模倣できる。T1ーT3端子間の電気伝導率の高低を「条件反応」の有無に設定し、餌に相当する電圧(無条件刺激)とベルに相当する電圧(条件刺激)の同時印加を定期的に繰り返すことで電気伝導率が次第に増加することを確認した。また、一旦、電圧の同時印加により電気伝導率が高値を示した後は、ベルに相当する電圧の印加のみでも電気伝導率は高値を維持した。これらのことから、条件反応に対応した素子を人工的に模倣できることが確認できた。
Expectations
テックマネッジ株式会社では、大阪大学からの委託により、本発明のライセンス導入による製品化・実用化をご検討いただける企業様を探しています。本発明/プロジェクトに関し、大阪大学との秘密保持契約締結による未公開データ等の開示のほか、研究者との直接のご面談によるお打合せも可能ですので、ご希望がございましたら何なりとご相談ください。
Publications
Publications
Sato K., et al., Sci Rep 13, 1261 (2023).
Ikeuchi T., et al., Appl. Phys. Express 16, 015509 (2023).
Miyake R., et al., ACS Appl. Electron. Mater. 4, 2326 (2022).
Patents
特許 第7591784号
Researchers
酒井 朗 教授 (大阪大学 大学院基礎工学研究科)
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