動作時における構成部品毎の過渡的熱伝導特性を評価できることに加えてノイズの影響も大幅に低減した高精度の放熱性能評価手法
Advantages
- 複雑なモジュール構造であっても、それを構成する部品毎の過渡熱抵抗の評価が可能。
- 従来技術と比べノイズの影響を大幅に低減できる。
- 汎用の廉価な装置/部品の組み合わせのみで、簡便かつ低コストでの熱特性評価が可能。
Background and Technology
パワーモジュールは小型化が進み益々需要が増加しているが、その性能を十分に発揮させるためには放熱特性を把握することが重要であり、その評価方法として過渡熱抵抗が用いられている。代表的な過渡熱抵抗の評価手法として、現在はJEDEC(米国)によるJESD51-14規格の手法が世界的に用いられている。しかしながら、同手法は詳細まで規定されておらず、これに準拠したとして販売されている測定装置はパワーモジュールを構成する部品毎の過渡熱抵抗の評価において解析精度が比較的低いため、SiC(炭化ケイ素)などの次世代パワー半導体デバイスを適用したパワーモジュールの評価が容易ではないという問題がある。さらに、それらの測定装置は高額であることからコスト面の問題も顕在化している。それに対し、JFCA(日本ファインセラミックス協会)では次世代パワー半導体デバイスを搭載したパワーモジュールの構成部品毎の詳細な過渡熱抵抗評価を目指した標準化のプロジェクトが進行中であり、本発明者らも同プロジェクトに参画し、問題解決を目指し鋭意検討している。
本発明は、パワーモジュールの動作時における構成部品毎の過渡的熱伝導特性を評価する方法、およびそのアルゴリズムに関する。まず、線形時間領域でサンプリングしたデータを不等間隔離散フーリエ変換し、演算に必要な対数周波数領域の情報に変換する。次に、変換後の対数周波数領域でノイズフィルタリングを行ったうえで逆フーリエ変換の処理を行うことで、既存技術に比べてノイズが大幅に低減され過渡熱特性の解析精度が向上する。本発明技術は、複雑なモジュール構造であっても構成部品毎の熱特性の評価が可能であることに加えて、市販の汎用装置のみで実施できるというコスト面でのメリットも有する。
Data
- 熱伝導率などのパラメータが既知の熱回路を準備し、その理想温度応答(理想的な時間当たりの温度変化をグラフ化したもの)に対しさらに環境ノイズ情報(コントロールしきれない物質の持つ熱ノイズ)を重ねることで試験データを作成した。
- その試験データに対するノイズ除去能について、従来のJESD51-14規格の手法と本発明とを比較したところ、本発明では従来技術に比べてノイズ除去能が20%以上も飛躍的に向上したことを確認した。
Future Research Plans
- モジュール構成部品毎の放熱特性を過渡的に評価する計算アルゴリズムのさらなる最適化、およびGUI化を予定。
Expectations
Publications
- 2019年度 大阪大学 JST新技術説明会 (2020年2月4日)
以下リンクから、説明会当日の舟木先生のご発表動画および当日配布資料がご覧いただけます
https://shingi.jst.go.jp/list/list_2019/2019_osaka-u.html#20200204X-007 - Shuhei Fukunaga and Tsuyoshi Funaki, "Transient thermal network model identification for power module packages.” IEICE Nonlinear Theory and Its Applications (NOLTA), 11, 157-169 (2020). *上記の各図の出典元文献
(doi) https://doi.org/10.1587/nolta.11.157
Patents
特許第7241349号
Researchers
舟木 剛 教授 (大阪大学 大学院工学研究科 電気電子情報通信工学専攻)