1度の撮像のみで細胞などの動的かつ透明な対象物の位相・振幅データの高解像度取得が可能。
Advantages
- 複雑な光学系や参照光が不要 → 小型化・低コスト化が期待できる
- 従来の位相差顕微鏡では得られない詳細な定量情報が得られる
- 機械学習法を組み合わせることも可能であり、処理の高速化によるコストダウンも期待できる
Background and Technology
従来、透明な生体試料などを高精度に観察するためには、位相差顕微鏡が広く利用されてきた。しかしながら、位相差顕微鏡では得られる情報が限定的であり、対象物の詳細な定量データを得る目的には不十分であった。また、構造化照明と組み合わせて画像を復元し定量データを取得した報告例はあるものの、ノイズが多く得られる情報は粗いという問題があった。一方、デジタルホログラフィーでは定量的なデータ取得が可能だが、参照光が必要なため光学系が複雑となり装置が大型化し、また複数回の撮像が必要となるため、細胞などの動的な対象物の観察には適していなかった。
本発明者は、これらの課題に対し、動的または静的な対象物に対して1回の撮像で、高分解度かつ定量的な情報を得ることができる革新的な画像解析法を開発し、この方法をSingle-shot phase imaging with randomized light (SPIRaL) と命名した。具体的には、SPIRaLではまず、空間的に振幅がランダムになるような干渉能を有するコヒーレント光や部分コヒーレント光(ランダムパターン構造化照明)を対象物に照射する。この光を照射して対象物を経由した光の強度情報から得られた画像に対して、フーリエ変換やウェーブレット変換といった画像処理を行うことで、対象物の複素振幅(振幅と位相の両方)の復元が可能となる。この処理には、対象物の持つスパース性に関する情報と、照射した光の情報を利用している。参照光とは異なり、複雑で大型の装置は不要で、生体試料などの動的な対象物の位相・振幅の定量的データ取得が小型装置かつ低コストで実現可能となる。さらに、機械学習とスパース性を組み合わせることも可能で、それにより高速処理が可能となる。SPIRaL技術を利用することで、例えば、細胞のがん化を判別する指標になり得ると言われている細胞の厚みや屈折率などの数値データの取得が容易に可能となる。
Data
- ガラスプレート上の油水混合物(エマルジョンではない)を、SPIRaLにより位相観察した結果、光学顕微鏡で得られる画像と同等の形状で、さらに強度と位相のイメージが復元できることを確認した。
- ワイヤー(不透明)をSPIRaLにより観察し、少なくとも30 µmの空間分解能で画像復元が可能であることを確認した。
Expectations
テックマネッジ株式会社では、大阪大学からの委託により、本発明のライセンス導入による製品化・実用化をご検討いただける顕微鏡や各種イメージング装置のメーカー様を探しています。本発明/プロジェクトに関し、研究者との直接のご面談によるお打合せも可能ですので、ご希望がございましたら何なりとご相談ください。
Publications
Horisaki R., et. al., Optics Express (2016) 24(4), 3765-3773.
Patents
PCT/JP2017/029156
→ 日・米・中・英・独・仏・伊にて特許成立済み。 *大阪大学よりライセンス可能
Researchers
堀崎 遼一 准教授 (東京大学 大学院情報理工学系研究科)
Please click here to see English summary.
以下のフォームからお問い合わせください