IoTセンサーやウェアラブルデバイス用の液体熱発電セルおよび電極

2024/03/27 13:33 By Tech Manage

Advantages

  • アルコール溶媒による電極接近で高発電:熱伝導度の低いアルコール溶媒を用いた電解液により、小さな熱流で大きな電極間温度差が生じ、水より高効率の起電力が得られる
  • ペースト型の低抵抗・大面積な電極で高発電:樹脂の表面に炭素粉末含有剤を塗布することで、フレキシブル形状の低抵抗電極を、シンプル、低コストかつ大面積に製造可能
  • IoTセンサー用の自立分散電源や、室温付近の廃熱の電力変換、体温を利用したウェアラブルデバイス用の電源などに用いられる

Background and Technology

環境中の温度差を電気エネルギーに変換するエネルギーハーベスト技術の一つとして熱発電セルが注目されており、電解液として水溶液を用いた熱発電セルが研究されてきたが、小さな熱流では電極間の温度差を大きくできない課題があった。本研究者は、電解液の溶媒として水より熱伝導度の低いアルコール(または所定量の水を添加)を用いることで、小さな熱流でも電極間に大きな温度差を生じさせ、高い起電力が得られる熱発電セルを作製した。水よりアルコールの方が、熱伝導度が低いため電極間距離を近づけて素子を薄くできるだけでなく、発電効率も高くできる。
また従来はシート状であった電極を、フレキシブルな樹脂等を素材とする電解液筐体の内側面に、炭素粉末含有剤を直接塗布することで形成した。作製した電極は、形状がフレキシブルなだけでなく高性能(低抵抗)であり、また構造がシンプルかつ低コストでの製造が可能である。ウェアラブル用途でも電極の面積を大きくできるため、出力をさらに大きくできる。
本技術の液体熱発電セルは、IoTセンサー用の自立分散電源や、室温付近の廃熱の電力変換、体温を利用したウェアラブルデバイス用の電源などに用いられる。

Data

  • メタノール溶液の電解液による発電:昇圧回路を用いてビーコンの駆動を実証済
  •     [実験条件]
        電解液: 0.5 M Fe(ClO4)2/Fe(ClO4)3 MeOH溶液
        電極間距離:10mm
        電極面積:706.5 mm2 (直径30mm)
        電極:グラファイトシート
        温度:上部20℃、下部60℃
        出力電圧:~22mV
        昇圧DC/DC コンバーター:AP4473(旭化成エレクトロニクス社製)

  • ペースト型の電極による発電:市販のグラファイトシートより高出力を実証済

  [実験条件]  

  電解液: 0.8 M Fe(ClO4)2/Fe(ClO4)3 水溶液

  電極間距離:10mm

  電極面積:42 mm2

  電極:グラファイト粉末とPVDFを9:1に混合・溶解し、ステンレス箔上に塗布

          (電極厚110μmと40μm)対照としてPERMA-FOIL(東洋炭素社製黒鉛シート)

  温度差:40℃


Expectations

  • 特許ライセンスや共同研究などをご検討いただける企業様を探しております。

Publications

  • アルコール溶媒による熱発電装置
    • A. Wake, D. Inoue, and Y, Moritomo, " Liquid thermoelectric conversion devices composed of several organic solvents" Jpn. J. Appl Phys., 62, 014002 (2023).
    • A. Wake, D. Inoue,and Y. Moritomo, "A liquid thermoelectric device composed of organic solution", Appl. Phys. Express, 15, 054002 (2022).
  • ペースト型電極
    • 2024年 第71回 応用物理学会 春季学術講演会「液体熱電変換素子のための塗布型電極」(相羽 憧也ら)

Patents

  • 特願2022-143805、特願2023-185647

Researchers

  • 守友 浩(筑波大学 数理物質科学研究科 教授)


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