高収率で簡単に使える芳香族ボロン酸エステル

2025/07/02 13:03 - By Tech Manage

シリカゲルクロマトによって単離精製可能かつ幅広い官能基変換が可能

Advantages

  • シリカゲル上でのテーリングや原点吸着がなく、誰でも安定したクロマト精製が可能
  • 芳香族ボロン酸ピナコールエステルと同等以上の反応性を有し、様々な誘導体合成に展開可能
  • 鈴木カップリングなどでより高収率を達成。研究の再現性と信頼性が向上

Background and Technology

芳香族ボロン酸のピナコールエステル(ArB(pin))は、鈴木-宮浦カップリングなどに広く利用される標準的なボロン酸誘導体である。しかし、この化合物はシリカゲルとの親和性が高く、薄層クロマトグラフィー(TLC)やシリカゲルカラム精製においてテーリングや吸着が頻発するため、研究者にとって扱いにくい試薬の一つである。これにより、収率が著しく低下し、再現性の確保が難しくなることも多く、合成ルートの開発やスケールアップにおいて大きな障害となっていた。
本技術では、ピナコールの4つのメチル基をエチル基に置換した「Epin(1,1,2,2-テトラエチルエチレングリコール)」を新たな保護基とすることで、“ArB(Epin)” という新規芳香族ボロン酸エステルを開発した。
この設計は、「エチル基末端のメチル基がホウ素の空軌道を動的に保護する適切な距離にある」という発明者の仮説に基づいており、反応性を維持しつつ、精製操作および取扱いの簡便化を実現している。

Data

  • TLC挙動:ArB(pin)は原点への残留やテーリングが顕著であるが、ArB(Epin)は明瞭かつ綺麗なスポットを形成し、完全な展開が可能である。
  • シリカゲルカラム精製:2-furanB(pin)の回収率が22%であったのに対し、2-furanB(Epin)では99%と、精製効率が大幅に向上した。
  • 高い収率:ArB(Epin)は、ArB(pin)やArB(OH)₂と比較して高い収率を示し、反応性にも優れている。

Expectations

本技術は、天然物全合成、医薬品探索、有機電子材料の研究開発において高い展開性を有しています。既存の合成ルートに対し収率の改善やコスト削減など、シンプルかつ効果的な改良をもたらすことができ、合成化学者の“困りごと”を直接解消するソリューションです。
現在、本技術のライセンスまたは共同研究パートナーを広く募集しております。発明者との面談も可能ですので、ご関心のある方はお気軽にお問い合わせください。

Patents

特願2023-503795 

Publication

Oka et al., Organic Letters 2022, 24, 3510−3514.

Researchers

井川 貴詞 (岐阜薬科大学,薬学研究科,教授)

以下のフォームからお問い合わせください

Tech Manage