脳動脈瘤破裂の予測と予防方法

2023/05/30 11:40 By Tech Manage

腸内細菌の特徴から脳動脈瘤が破裂するリスクを予測

Advantages

  • 腸内細菌の特徴から未破裂脳動脈瘤の破裂リスクを予測

Background and Technology

未破裂脳動脈瘤の保有率は成人の約3%と言われているが、この未破裂脳動脈瘤が破裂し、頭蓋内に出血が生じると、重篤なくも膜下出血を発症することになる。しかし動脈瘤の破裂率は大きさや形態、既往疾患などから予測されているものの、実際の破裂率は1%~2%と低い値になっている。そのため未破裂脳動脈瘤を保有する患者は、滅多に破裂しないが破裂すると致命的になるという、いわば爆弾を抱えるような不安と共に生活していかなければならない。このような不安を解消するには、破裂予防を目的とした外科的治療を行う必要があるが、その合併症(副作用)が数%に認められ、予防治療を受けること自体にもリスクを伴う。
腸内細菌叢は全身の様々な疾患と関係していることが知られており、さまざまな脳神経疾患との関係も報告されているが、脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血患者の腸内細菌の関係を調査したものはない。本研究により、従来では年齢や性別、動脈瘤の大きさなどでしか予測しえなかった未破裂脳動脈瘤の破裂率に腸内細菌叢という新しい因子を加えることで、より高い精度で破裂予測ができる可能性がある。また従来は外科的治療しか効果的な破裂予防ができなかった未破裂脳動脈瘤に対して、腸内細菌叢を操作し破裂予防を行うという新しい治療法につながる可能性もある。

Data

  • 16S rRNA解析を用いて、くも膜下出血患者と未破裂脳動脈瘤患者の腸内細菌叢を比較した結果、くも膜下出血患者に特徴的ないくつかの細菌株を同定
  • さらに、Campylobacter属がくも膜下出血患者に多く検出されることが確認し、その中でもC. ureolyticusの検出率が高いことが判明


図1)研究概要
くも膜下出血患者と未破裂脳動脈瘤患者の腸内細菌叢を比較し、Campylobacter属、その中でもC. ureolyticusが破裂に関与していていることを示唆した。



図2)群間比較解析結果

Expectations

  • 腸内細菌検査報告書に動脈瘤破裂リスクの掲載を目指した共同研究(将来的には未破裂動脈瘤患者への腸内細菌検査も期待)
  • 従来は外科的治療しか効果的な破裂予防ができない未破裂脳動脈瘤に対して、腸内細菌叢を操作し破裂予防を行うという新しい治療法の開発に向けた共同研究

Patent

特開2022-122271

Researchers

高垣 匡寿
大阪大学 医学系研究科 助教
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