配向を制御可能なセルロースナノファイバーの立体成形技術

2022/12/01 12:04 By Tech Manage

電気泳動堆積法により簡単なステップで特性の変化が可能。抗ウイルス効果もあり

Advantages

電気泳動堆積法を用いた配向制御可能なセルロースナノファイバー(CNF)の立体成形技術
  • セルロースナノファイバーを任意の配向状態で連続的に積層・固定することが可能
  • 簡便かつ自由度高く弾性や摩擦係数など様々な特性を変化させることが可能
  • ウイルスの99.8%が不活性化する抗ウイルス機能もあり、幅広い応用が期待

Background and Technology

木材やヒトの体など天然の生体組織は、構成する生体高分子が高度に配向し階層構造を形成した「不均質」な構造を有している。木材は「木目」の方向によって、割れやすさや圧縮・引張時の強度、吸水時の膨らみやすさが異なり、その配向のおかげで軽くて強靭な構造を実現している。またヒトの「軟骨」は動作時の衝撃を吸収するクッション性と、表面の潤滑性を兼ね備えた高機能な組織であり、軟骨を構成するコラーゲン繊維が骨表面に対して、垂直、ランダム、水平にシームレスに配向・積層していることによって実現している。
CNFは環境負荷の少ない材料であることから、軽量、透明、高強度な応用製品の開発が検討されている。しかしCNFとして木材をばらばらにしてしまうと、立体的な形状のCNF乾燥体の作成は困難であるだけでなく、得られる材料は不自然な「均質材料」となってしまい、不均質な階層構造が持つ特異な性質を再現することは容易ではない。
そこで大阪大学の春日先生らは、電気泳動堆積法を用いて電極形と印加電圧を変化させることでCNF形状と配向を簡単に制御し立体的なCNF乾燥体を作成できる手法を開発した。また成形物は抗ウイルス機能も有することから、様々な用途への展開が期待できる。

Data

  • 電圧を変えるだけで、配向方向を水平・垂直・ランダムに変更可能

図1)電界強度に応じたCNFの配向状況(水平/ランダム/垂直配向状態で固定)

  • 配向方向を変えると圧縮弾性率が大きく変化
  • CNFを水平配向したハイドロゲルの摩擦係数μ=0.07と平滑&超低摩擦を実現

図2)配向状態によるCNFハイドロゲルの物性変化(圧縮弾性率/摩擦係数)

  • 電極の形に合わせて形状を変化、水平から垂直方向への連続した配向方向変化も可能

図3)電極形状は自由 & 任意の厚み/配向状態で継ぎ目なく積層可能

<Application example>
例1)継ぎ目のない立体形状
例2)マスク(孔の開いた板)を用いた任意形状へのパターニング
例3)多孔質基板への垂直配向(マイクロニードルアレイ)

Expectations

今回発明したCNF成形&配向制御技術をもとにCNFがより多くの用途に展開できることを目指しており、具体的な用途開発に興味関心のある企業との共同研究や技術ライセンスを進めていただける企業を求めております。
具体的な共同の仕方については企業の要望に応じてアレンジ可能であり、詳細については話し合いを通じて決めていきたいと考えております。興味・関心がある企業からのご連絡をお待ちしております。

Patents

特願2020-102410 特願2021-154644 特願2022-073615

Publications

Researcher

春日貴章 助教
大阪大学 産業科学研究所 自然材料機能化研究分野
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