二次元シート状の新規素材 ホウ化水素 HB:低白金使用の燃料電池電極素材

2024/06/18 10:32 - By Tech Manage

Advantages

  • 筑波大学で始めて合成された新しい素材、ホウ化水素 (HB)n
  • ホウ化水素が金属錯体を還元し、表面に貴金属(Ru、Pd、Pt、Au)のナノ粒子を作る
  • HB担持PtPd合金ナノ粒子は、高い酸素還元反応(ORR)活性を示し、固体高分子燃料電池(PEFC)のPt/C触媒を凌駕する
  • HB担持Ag合金ナノ粒子は、酸素発生反応(OER)触媒Co3O4の活性を増進する。水素発生(水分解)電極の補助剤として期待できる
  • 筑波大学では、ホウ化水素を製造するメーカーや、利用するユーザー企業を探している。協業開発体制を提案可能。

Background and Technology

二次元的な分子構造を持つ「ホウ化水素(HB)」は筑波大学で2017年に始めて合成された新しい素材です(論文1)。ホウ化水素は優れた還元特性を持ち、燃料電池カソード電極素材や水電解電極素材としての利用が期待されます。

■ホウ化水素の還元特性
ホウ化水素(HB)は、還元剤として働きますが、その先に、非常に特異な性質を示します。HBはニッケルよりも酸化還元電位が高い金属、例えばSn、Cu、Pd、Pt、Auを還元します。そして、驚くべきことに、その還元した金属がHBの表面でナノ粒子として現れます(下図)。PtやPd、Auといった触媒活性が良い貴金属が、粒径1-6 nmの高い分散性を持った状態でHB上に現れるため、その活性がさらに高まることが期待されます。実際、HBに担持された金属ナノ粒子が優れた触媒活性をもつことが実験的に報告されています。

■ホウ化水素が担持する金属ナノ粒子の特異性
HB上に生成した金属合金のナノ粒子は、燃料電池で使用する白金Ptの量を大きく減らすかも知れません。HBに担持されたPtPd合金粒子は酸素還元反応の活性を持つことがわかっています(論文2)。そして、その活性は固体高分子燃料電池に典型的に使われる Pt/Cの数倍の質量活性および比活性を示すと報告されています。また、別の報告(論文3)では、反応を工夫した結果、Pt粒子が小さいサイズ(2.5 nm)、高密度(最大80質量%)、シンタリングに対する高い安定性を持つとされます。同報告では、多成分の金属化合物(Pt4FeCoNiCu)をHB上に作り、市販のPt/Cよりも大幅に向上した質量活性、比活性、および非常に優れた耐久性を示すことも報告しています。
つまり、HB担持Ptや合金のナノ粒子は、Pt本来の触媒活性を増強するため、Ptの使用量の削減につながります。従来使われているカーボンブラックやグラフェンなどの担体からHBに置き換えることで、燃料電池や水電解などにおける低コスト化が期待できます。
また、さらに別の例(論文4)では、HB上に生成したAgナノ粒子が酸素発生反応(OER)触媒Co3O4と組み合わさることで、IrO2触媒よりも優れた酸素発生反応活性を持つと報告しています。

ホウ化水素は、金属ナノ粒子触媒の活性を向上するという非常に興味深い特性を持ち、最先端の素材であり、カーボンブラックやグラフェンのような従来の触媒担体に置き換わるかもしれません。

Expectations

筑波大学では、ホウ化水素を製造するメーカーや、利用するユーザー企業を探しています。白金の使用量の大幅削減や水分解水素精製、他の酸素還元・生成反応などの反応効率化など、広い分野での効果が期待されます。ぜひ、貴社の次世代事業として導入を検討ください。
以下のように情報やサンプルを提供でき、貴社での本技術の導入の検討・事業化の支援をご相談できます。
  • ご質問への対応
  • 先生とのご面談による詳細説明
  • NDA締結下での情報交換
  • 少量のサンプル品の提供(有体物移転契約)
  • 共同研究
  • 特許ライセンス

Publications

Patents

  • HBの還元剤としての特性に関する特許出願 WO2020/179779

Researchers

近藤 剛弘(筑波大学 数理物質系 教授)
宮内 雅浩 (東京工業大学 物質理工学院 教授)
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