抽出効率の高い有機溶媒抽出方法

2023/07/05 13:38 By Tech Manage

~分子クラウディング効果により低量の有機溶媒でコバルト等の希少金属を選択的に分離~

Advantages

  • 細胞内の環境が混み合うと生体分子の平衡定数や反応速度が変化する分子クラウディング効果を、有機溶媒抽出の効率向上に応用
  • 水相にデキストラン等の分子クラウディング剤を加えるだけで、有機相中の錯形成が増加し、溶媒抽出が促進されたことを実証済
  • 有機溶媒でコバルト等の希少金属を選択的に分離する際に、有機溶媒量の低減や抽出効率の向上につながり、環境負荷やコストの抑制に貢献できる

Background and Technology

物質の液相での反応、特にゲスト・ホスト反応は反応効率を向上する方法が限られる(下図左側)。一方、細胞内のようなタンパク質や核酸、糖類などの高分子が高濃度で混み合った環境の下では、排除体積効果や浸透圧効果などにより分子の反応挙動が変化する。そうした環境は分子クラウディング環境と呼ばれる(下図右側)。筑波大学の宮川先生らは、この分子クラウディング環境が工学的な化学反応における反応効率を向上すると発想し、研究している。

具体的には、水相中の金属イオン(例えば、コバルトイオン)と、有機相中の配位子(オキシン)とが錯形成したのち溶媒抽出する反応において、水相に分子クラウディング剤(例えば、デキストラン)を加えるだけで有機相中の錯形成が増加し、溶媒抽出が促進されたことを実証した。この手法を用いることで、ホストゲスト反応によって合成される様々な化合物の製造を効率化したり、コバルト等の希少金属を選択的に分離する際の有機溶媒量の低減や抽出効率の向上につながり、環境負荷やコストの抑制に貢献できると考えられる。

Expectation

筑波大学では本研究をもとにした事業化、製品化をご希望される企業を募集します。本研究によりホストゲスト反応の収率の向上やコストの削減、リードタイムの短縮などの効果が期待され、貴社の化学合成事業の一助になると考えます。大学での研究はまだ初期段階ではありますが、貴社が持つ課題をお伺いできれば、それに合わせた共同研究など、事業化に向けたフィジビリティスタディをご提案できます。そして、本研究を事業として採用される際には、筑波大学が保有する特許をライセンスすることができます。本研究に関心をお持ちでしたら、ぜひ弊社へお問い合わせください。

Publication

  • 宮川晃尚、小松弘幸、長友重紀、中谷清治 「分子クラウディング環境を利用したオキシン錯体の溶媒抽出」 第83回分析化学討論会、P2121

Patent

  • 特許出願中

Researcher

宮川 晃尚(筑波大学 数理物質系 助教)

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