耐久性の高い金属フリー酸素生成反応触媒

2024/06/12 15:27 - By Tech Manage

~菱面体硫化ホウ素とグラフェンの混合物で高効率にアルカリ水電気分解~

Advantages

  • 新規の触媒素材:菱面体硫化ホウ素(r-BS)をグラフェンに担持
  • 非金属では世界最高レベルの酸素発生反応触媒活性:ルテニウム酸化物触媒より優れる
  • 耐久性が高い:500回の電気化学反応サイクル後でもI-E曲線に変化無し
  • r-BSは世界的に注目:光触媒応用やさらなるOER活性向上技術が多数報告
  • r-BSの製造技術開発のパートナー企業を探索中
  • r-BSの応用技術開発(水素発生、二酸化炭素の還元、アンモニア合成、金属空気電池など)のパートナー企業を探索中

Background and Technology

二酸化炭素を排出しないゼロエミッション社会に向けて、高効率にアルカリ水電気分解するための電極触媒材料の開発が進められているが、従来は高価かつ希少なイリジウムやルテニウムが用いられている。
本技術は、安価かつ豊富な材料を用いながらも反応し、しかも、ルテニウム酸化物RuO2よりも高い活性を持つ酸素生成反応(OER)触媒である。具体的には菱面体硫化ホウ素(r-BS)と呼ばれる新規の素材を、グラフェンに担持した粉体となる。
r-BSは近年その特性が注目されているが、筑波大学数理物質系教授の近藤先生らはいち早く着目し、ナノ厚みのシート状r-BS結晶の合成に成功した(論文1)。さらにこのr-BSをさまざまな担体と組み合わせる研究を進めた結果、グラフェンが非常によい担体であるとわかった。
グラフェン担持r-BSは非常に優れたOER活性を持つことが確認されている(論文2)。酸素生成反応触媒活性は10 mAcm-2で250 mVしか過電圧を持たない。これは、ルテニウム酸化物触媒を凌駕する性能であり、報告されているメタルフリーのOER触媒の中では最小と考えられる。
さらにグラフェン担持r-BSは、耐久性にも優れている。近藤先生らは、500回の電気化学反応サイクル後でのr-BSの劣化具合を見たが、全く活性は変わっていなかった(論文2)。さらに、X線回折やラマン分光により物資の状態を見たが、これにも変化がほとんどなかった。さらにサイクル数を重ねた場合や、高電気密度を印加した場合でも活性が変化しないことも確認している。つまり、r-BSは電気化学反応に対して非常に安定であると期待される。
近藤先生らの発表後、r-BSに対する世界の目が集まっており、多数の応用研究が報告されている。例えば、論文3は、グラフェン担持r-BSをニッケルフォームと組み合わせることで、OER特性がさらに向上する、と報告している。また、論文4は、r-BSの光触媒としての性質を報告している。

Expectations

■化学素材の開発メーカー様へ
r-BSの合成方法の開発にご協力いただけますでしょうか?
現在、先生方によるr-BSの合成では、高温(1600℃)と高密閉条件(5.5 GPa環境)が必要です。そこで、大量合成に向けた温和な合成条件の開発を協業いただける企業様を探しています。
貴社の豊富な経験と知識を、ぜひ次世代素材開発にご活用いただけますと幸いです。

■酸素生成反応を利用する合成・分解事業のメーカー様へ
r-BSをOER触媒に使用したい企業様を探しています。OER反応の多くの応用(例えば、水素発生、二酸化炭素の還元、アンモニア合成、金属空気電池など)にr-BSは活用できると考えます。貴社の既存事業へのシナジーや新規事業としての導入をご検討ください。

いずれの企業様へも、以下のように情報などを提供でき、貴社での本技術の導入の検討・事業化の支援をご相談できます。
  • ご質問への対応
  • 先生とのご面談による詳細説明
  • NDA締結下での情報交換
  • 少量のサンプル品の提供(有体物移転契約)
  • 共同研究
  • 特許ライセンス

Publications

Patents

  • 特許出願公開中:特開2023-168308

Researchers

近藤 剛弘 (筑波大学 数理物質系 教授)

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