Advantages
- シリコンゲルマニウムからなる薄膜の熱電変換素材。温度差をエネルギー源として電気を発生する
- 曲げられる。耐熱性プラスチックを基板に採用できるため、熱電変換デバイスを曲げることが可能
- 用途1:工業廃熱を利用した発電への応用を想定。エナジーハーベスティングによるIoTデバイスのその場発電に活用。
- 用途2:ウェアラブルデバイス用電源
- 電源としての利用に関心ある企業様や、本技術の熱電変換素子を製造いただけるメーカー様を探索中です。
Background and Technology
「エナジーハーベスティング(環境発電)」が注目されている。太陽光や室内光・振動・排熱・体温・電磁波など環境や生活に存在するエネルギー源を使って発電することをいう。発電量は少ないが、IoTデバイスやウェアラブルデバイスなど小型の電子機器の駆動に応用が期待される。本技術は、エナジーハーベスティングの一つである、熱をもとに発電する「熱電変換素子」を提案する。
筑波大学の都甲准教授は、薄いプラスチックシートのように形を変えることが出来る、熱電変換素子を開発した。この素子はシリコンゲルマニウム(SiGe)という熱電変換素材で出来ている。都甲先生が開発した半導体製造技術により、SiGeの薄膜を、ガラスや耐熱性プラスチックの基板上に製造したものである。
独自開発の半導体製造技術は、「層交換」と呼ばれる。基板上に金属と半導体素材(アモルファスSiGe)を順に積層したのち、低温で加熱することで、半導体原子が下面の金属内に拡散し、最終的には金属層の下に半導体素材の層ができあがる現象をいう(図1)。その後、最上面に現れた金属層をフッ酸などで除去することで、半導体結晶の薄膜が得られる。これまでの研究から都甲先生の研究グループは、シリコン、ゲルマニウム、グラフェン、そしてSiGeの層交換技術を確立した。
提案する熱電変換素子は、この層交換技術によって製造したp型とn型のSiGeをヘテロ接合したものである。層交換は比較的低温(500℃程度)で起こるため、従来のシリコンやサファイアだけでなく、ガラスや耐熱性プラスチックを基板に採用できる。また、半導体膜も非常に薄い(数十nm)。よって、プラスチックを基板とする熱電変換素子は、形状を変える・フレキシブルであるという、例をみない特徴を持つ。熱電変換素子は一般に形状を変えることはできないため、パイプやタンクのような曲面やエンジンのような複雑な形状に対して適用することが難しかった。本技術は熱電変換素子のフィルムを曲げることでそうした面に適用しやすく、熱をもとにした発電の用途が広がると期待される。
Data
- 筑波大学独自開発の層交換技術により、n型SiGe膜(Asドープ)とp型SiGe膜(Bドープ)をガラス基板上に製膜した(図2)。
- 発電効率を計測した。ゼーベック係数は室温において、p型で200 μV/K以上、n型で-100 μV/K以下であった。出力因子は、p型で90μW/mK2 、n型で200μW/mK2 であった。ただしこれはGeの組成比に依存する。
- 温度差を5 K、10 Kとして、発電特性を測定した。温度差5 Kの場合、無負荷時の起電力は1.7 mV、最大出力が0.4 nW、最大出力時の電圧電流特性は、それぞれ1.0 mV、4 nAであった。温度差10 Kでは、無負荷時の起電力が3.5 mV、最大出力が0.15 nW、最大出力時の電圧電流特性はそれぞれ3.9 mV、10 nAであった。
Expectations
筑波大学では、本技術を導入し、熱電変換による発電デバイスのご活用に興味をお持ちの企業を探しています。
- IoTやウェアラブルデバイス開発の企業様へ:貴社のデバイスの新しい電源としてお使いください。従来にないエネルギー源を活用し、SDGsに適した製品・ソリューション開発をお手伝いします。
- 排熱や太陽熱、地熱発電などの活用をお考えの企業様へ:新しいエネルギー源としてご採用ください。
- 熱電変換素子のメーカー様へ:貴社の新しい熱電変換デバイスとしてご採用ください。エナジーハーベスティングを普及するための技術開発をお手伝いします。
いずれの企業様へも、以下のように情報などを提供でき、貴社での本技術の導入の検討・事業化の支援をご相談できます。
- メールベースでご質問への対応
- 先生とのご面談による詳細説明(オンライン、オフラインともに可能)
- NDA締結下での情報交換(貴社のニーズ情報を詳しくお教えください)
- 少量のサンプル品の提供(有体物移転契約)
- 共同研究
- 特許ライセンス
Patents
WO2021/149770 A1
Researchers
都甲 薫 准教授 (筑波大学 数理物質系)
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