血液検査により、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を他の血栓性微小血管症(TMA)と鑑別診断する診断キット
Advantages
- 従来方法では難しかったaHUS鑑別診断・寛解モニターができる。
- 補体標的薬(抗C5抗体など)の奏功患者が判定できる。
Background and Technology
非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)は、血栓性微小血管症(TMA)の一つであり、膠原病関連TMA等の二次的TMAと類似の病態を呈する。原因が遺伝的/後天的な補体の無秩序な活性化による血管内皮細胞障害であることが他のTMAとの違いであり、維持透析や死亡のリスクが高い重篤な疾患である。
現在のaHUS診断は、補体関連遺伝子の異常、補体制御因子である抗H因子抗体の存在および臨床的診断の組み合わせで行われる。しかしながら、明確な判断基準はなく、未発症の遺伝的保因者や膠原病関連TMAとの鑑別は難しい。aHUS発症数は日本国内で年間数十~数百例程度であるが、本鑑別診断の対象となる膠原病関連TMAの発症数は日本国内で年間1万例程度と思われ、鑑別の精度が上がればaHUSと診断される症例が増える可能性がある。
aHUS治療においては血漿交換等の血漿療法と補体標的薬である抗C5抗体薬治療が行われる。抗C5抗体薬はaHUSに対し高い効果を示すが、高価な治療薬であり、使用の際にはaHUSの確定診断が望まれる。また、寛解に至った際の投薬中断の判断も重要である。
私たちは、aHUSの血漿中タンパク質マーカー及び測定方法を開発し、aHUSの鑑別診断および寛解中の患者モニターを可能にした。
Expectations
- aHUSは日本国内の指定難病であり、名古屋大学はaHUS疾患事務局を運営し、多くの患者の検査を行っている。本方法はその研究の成果である。
- aHUSの鑑別診断および寛解モニターは、補体標的薬の開発マーカー/コンパニオン診断薬になりえる。補体標的薬の開発企業と診断薬企業のコラボレーションを進めたい。
- 今後、本技術をaHUS診療ガイドラインへの掲載および保険収載を検討する予定である。
- また、本技術を、他の補体関連疾患(発作性夜間血色素尿症、重症筋無力症、視神経脊髄炎、膠原病等)の鑑別診断に適用したい。
Patents
- 特許出願済(未公開)
Researchers
加藤規利 講師(名古屋大学医学部附属病院 腎臓内科)
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