血中のポリシアル酸を簡易かつ高精度に検出・定量できるプローブおよびキット
Advantages
これまで適切な疾患マーカーのなかった精神疾患について、患者血中のポリシアル酸をバイオマーカーとした診断が可能
神経変性疾患・がん・細胞のマーカーに応用可能
Background and Technology
ポリシアル酸(polySia, PSA)は脳に偏在するシアル酸の重合体であり、神経細胞接着分子(NCAM)の修飾糖鎖である。polySia-NCAM(PSA-NCAM)は胎児期の全身、成人の脳の嗅球・海馬・情動・時計に関わる可塑的領域、NK細胞、およびがん細胞に限定して発現している。polySia-NCAMは排他的空間を形成して細胞間の距離を調節する働きに加え、様々な神経関連因子(ドーパミン・FGF2・BDNF等)を誘引するため、新たな脳機能メカニズムとして注目されている。
一方、polySiaは疾患関連糖鎖でもあり、ポリシアル酸転移酵素遺伝子ST8SIA2において疾患関連SNPの報告や、ST8SIA2-KOpolySia発現が変動することが報告されている。また、統合失調症・双極性障害・うつ病患者の脳でpolySia-NCAM発現の異常、アルツハイマー病等の神経変性疾患においてpolySiaの異常が報告されている。さらに、非小細胞性肺がん・神経芽腫・膵がん・乳がんでpolySia-NCAMが高発現するケースが知られている。
しかしながら、従来のpolySiaやpolySia-NCAMに対する市販抗体やそれを用いたキットは精度が十分でなく、polySiaに関する基礎研究およびバイオマーカーとしての応用開発は進んでいなかった。私たちは、polySiaに特異的に結合する抗体・中分子・低分子等のプローブ開発に取り組み、複数のプローブとそれらを用いたELISA(マウス脳組織polySia検出感度<1ng)を開発し、ヒト血中polySiaを簡便かつ高精度に検出・定量できることを実証した。
Data
Expectations
- 本発明プローブを用いた標準化キットを開発し、臨床検体を測定しpolySia測定を統合失調症等のバイオマーカーとして確立する
Patents
Researchers
佐藤 ちひろ 教授(東海国立大学機構 糖鎖生命コア研究所)