進行性リスクの高い患者を見出し、早期の治療介入に有効な血清エクソソーム由来の肺サーファクタントタンパクB(SFTPB)
Advantages
- 既存のバイオマーカーであるKL-6、SP-Dよりも高い診断能。
- 線維化進行リスクの高い患者を見出し、抗線維化薬などの早期治療により、予後改善につながることが期待される。
Background and Technology
間質性肺炎は慢性経過で肺に不可逆的な線維化をきたす難病であり、200以上の疾患が含まれる。近年、間質性肺炎の中でも、特発性肺線維症(IPF)以外の疾患で、進行性の線維化を伴い呼吸機能が低下する症状を持つものを共通して、進行性肺線維症(PPF)と総称する新たな疾患概念が2022年に提唱された。PPFの生存率について調べられたフランスの研究では、生存期間中央値が2.4~7.9年と報告されている。抗線維化薬がPPFに対しても有効性を示すが、線維化が進んでしまった晩期での治療介入では効果が限定的となってしまう。そのため、抗線維化薬の治療効果を活かすには早期の治療介入が望まれているものの、現状のPPFの主な診断基準は、呼吸機能の低下、肺画像上の線維化の悪化、呼吸器症状の悪化を組み合わせたものであり、線維化の進行前にPPFを診断することは困難であった。
本発明者らは細胞外小胞(エクソソーム)中に含まれるバイオマーカーの探索を長年研究しているが、上記の問題に対し、血中のエクソソームに着目し、最新プロテオミクス(蛋白網羅的解析)とシングルセル解析を駆使することにより、血液中のエクソソームから、肺線維化の病態や進行と密接に関わるバイオマーカーとして肺サーファクタントタンパクB(SFTPB)を同定した。SFTPBは、界面活性作用で肺胞構造を維持する機能が知られている。血清エクソソーム中のSFTPBは、従来の間質性肺炎関連バイオマーカーである血清KL-6やSP-Dよりも間質性肺炎の病勢と強い相関を示し、進行性リスクの高い患者を早期に捉えることが可能である。その結果、抗線維化薬などの早期治療介入につなげることで、予後を改善することが期待される。
Data

- SFTPB、KL-6、SP-Dを間質性肺疾患の進行性を予測するバイオマーカーとして使用した際のROC曲線を作成した。進行性の定義は1年後%FVC低下率>10%、1年以内の急性憎悪、1年以内の死亡のいずれかを満たすものとした。その結果、SFTPBのAUCはKL-6、SP-Dよりも高かった。
- 特発性肺線維症(IPF)を除く間質性肺炎(ILD)の患者の血清エクソソーム中のSFTPB量と生命予後の関係を調べたところ、SFTPB量と有意な関連を示した(右図)。
Expectations
SFTPBをバイオマーカーとした、PPFの診断薬、リスク診断、コンパニオン診断、治療効果判定等の開発にご興味のある企業を探しています。ご興味がございましたら、本発明者とのご面談も可能ですので、お気軽にご連絡ください。
Publications
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Patents
Researchers
武田吉人 准教授 (大阪大学 大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学)
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