人工関節等インプラント用途に適した低ヤング率のチタン合金の製造が可能
Advantages
- 骨に近いヤング率のTi-Nb系合金を加工プロセスのみで製造でき、骨への応力遮蔽を抑制することが可能
- 先発の現行合金も含め、他のチタン基固溶体合金にも適用可能な技術
- 強度・耐食性を維持しつつ長寿命インプラントを実現
Background and Technology
人工関節や骨固定用プレート・スクリューに用いられるチタン合金は、高強度・耐食性に優れる一方で、骨に比べてヤング率が高く、剛性差による応力遮蔽が生じやすいという問題がある。そのため、長期使用した場合には骨の劣化が進行し、再手術の原因となることもある。従来は合金組成の工夫でヤング率の低化が試みられてきたが、報告されている様々な合金のヤング率と人骨のヤング率には今なお大きな差があり、性能と強度の両立には限界があった。
本発明者は、加工プロセスのみでヤング率を骨に近いレベルまで低減できる製造技術を開発した。本技術は、高温で体心立方構造(BCC)をもつTi-Nb系を始めとするチタン固溶体合金に適用可能な、新たな集合組織制御法であり、加工のみでヤング率を制御するため、材料が元来持つ高強度・耐食性は維持される。優先動的結晶成長(Preferential Dynamic Grain Growth: PDGG)メカニズムと命名されたこの手法は、特定結晶方位の結晶粒が変形中に優先的に成長する現象に立脚している。合金種を限定する方法ではないので、既存合金においても高温条件下で平面ひずみ圧縮加工を施すことで、ヤング率が低い方位の結晶配向を優先的に成長・集積させることが可能となる。
この結晶配向制御により、材料本来の高強度・耐食性を損なうことなく、骨との力学的整合性を大きく向上させることができるため、応力遮蔽を根本的に抑制し、人工骨・人工関節の長期的な生体適合性と安定性の向上や長寿命化のほか、歯科インプラントなど幅広い医療分野での応用が期待される。
Data
生体適合性の高いTi-37mol%Nb合金に本技術を適用し、高温で平面ひずみ圧縮を行った結果、圧縮面と伸長方向に対し {001} <110> 方位が高度に集積した組織の作製に成功した。
したがって、この材料から、低ヤング率の <100> 方向の製品を得ることが可能となる。本技術の適用により、他のチタン合金にも<100>方向の製品の製造が期待できる。
Expectations
テックマネッジ株式会社では、大阪大学からの委託により、本技術の医療機器としての実用化に向け、ご関心をお持ちいただけるインプラントメーカーの探索を行っております。具体的には、本発明技術を用いた人工関節や歯科インプラント等への製品応用を想定した材料最適化や、各種信頼性評価、さらには動物実験や臨床治験に向けた取り組みを共に推進していただけるパートナーを求めています。
また、大阪大学との秘密保持契約締結による未公開データ等の開示のほか、研究者との直接の打ち合わせも可能です。ご希望がございましたらお気軽にお問い合せください。
Patents
特許第5492975号
Publication
Researchers
福富 洋志 特任教授 (大阪大学 大学院工学研究科)
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