低コスト水素製造のための、固体高分子型水電気分解向け卑金属電極

2021/01/12 00:27 By Tech Manage

Background and Technology

 水の電気分解による水素製造は、再生可能エネルギーによる電力を使い、「貯められる・運搬コストが安い」エネルギーキャリアである水素を効率的に生成する技術と期待される。
水電気分解技術のひとつである固体高分子型(PEM型)水電解は、純度99.999%かつ高圧(30 bar以上)の水素を高いエネルギー効率で生成できる利点がある一方、使用する電極が貴金属(白金、イリジウム)であるため、システム全体としてのコストが高いことが問題である。

 この度、筑波大学 数理物質系所属の伊藤良一准教授は、PEM型水電解において、カソードをニッケルモリブデン合金に、アノードをCr、Mn、Fe、Co、Niからなる高エントロピー合金に代替した卑金属電極による、低コスト水素製造システムを提案する。

  • ニッケルモリブデン合金カソード(本技術)+酸化イリジウムアノード(従来技術)での評価で、電解電圧1.94Vにて、電流密度1.0 A/cm2を達成(同条件実験で従来技術の白金カソードを用いた場合は、電解電圧 1.8V@1.0 A/cm2)
  • 同じ電極について、2.0V動作で、連続260時間の動作を確認。従来、卑金属によるPEM型水電解では、電極が溶解してしまい、実現困難と考えられていたが、本技術は大きなブレイクスルーとなる
  • 白金カソード(従来技術)+高エントロピー合金アノード(本技術)での評価で、電解電圧1.95V@1.0 A/cm2を達成。

Expectations

 伊藤先生は、この技術を使った、家庭用の水電解水素ステーションを提案しています。
太陽電池と組み合わせることで水素の自家生成を可能とし、これを燃料電池車に搭載する、というオンサイト水素エネルギーシステムにすることで、水素社会実現において課題とされる水素ガス輸送や貯蔵の課題を簡略化できると期待します。
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