カット野菜の品質保持技術

2023/03/01 14:00 By Tech Manage

Advantages

微温加熱と呼吸の抑制技術との組み合わせによって野菜の劣化に関わる生理反応を選択的に抑制しカット野菜の外観品質を約1週間保持することが可能


<微温過熱:Heat Treatment(HT)>
40-60度の加熱水に浸漬することで、カットによって誘導され褐変の原因となる酵素(PAL:フェニルアラニンアンモニアリアーゼ)の活性が低下する。
<呼吸の抑制:Modified Atmosphere Packaging (MAP)>
包装内の酸素濃度を調節することで、カット野菜の呼吸活動を抑制する包装技術。

Background and Technology

カット野菜は洗う・切るといった手間を省ける、必要な時に無駄なく食べられる、生ゴミが出ないなどその手軽さから市場規模が拡大している(2,780億円/2018年)。しかし、カット処理による褐変や水浸状の状態変化を起こしやすく、外観品質を保持することが重要である。これまで、野菜の呼吸活動を抑制するために、ガス透過性を調節可能なフィルム包装や、包装内空気の除去(真空パック)による保蔵性延長法などが実用化されている。しかし、植物としての生理活性は維持されるため、褐変など劣化に関わる生理反応は進んでしまう点に問題があり、保証できる延長効果は24時間程度となっている。
レタスの褐変にはポリフェノールが関与しており、L-フェニルアラニンにPALが作用して生成される桂皮酸が出発物質となることが知られている。発明者らはHT処理によってPALの活性が低下することを見出し、カット野菜に対して40-60度の加熱塩素水を処理することで褐変を抑制することを実証した。さらに、MAP技術と組み合わせることで、1週間以上褐変を抑制しながら保蔵することができ、開封後ガス環境が通常に戻っても褐変を抑制することができることを見出した。また、一般生菌数の制御においても本技術の優位性が示唆されている。

Data

カットレタス保蔵中のPAL活性の変化(左)と8日保蔵後の状態(右写真)

C区:対象区(低温の次亜塩素酸殺菌)、HT区:殺菌液のHT処理+通常包装

MA区:低温処理+ガス環境調節包装(MAP)、HT+MA区:HT処理+MAP

Expectations

HT処理法によるカット野菜の殺菌洗浄工程の装置化やシステム化に共同で取り組んでいただける企業との共同研究を希望しています。特に熱容量の大きな物体を水浸させた際に、一定の温度が維持できるような処理装置を開発した経験を有する企業との共同研究を希望します。また、特定の野菜におけるポストハーベスト条件の最適化に関心のある生鮮野菜の取り扱い企業様との協業も可能です。

Patent

特願2021-077453

Researcher

小川幸春先生(千葉大学大学院 園芸科学研究科)

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