筋衛星細胞の効率的未分化培養技術

2024/09/03 11:33 - By Tech Manage

ラミニンα3,α4,α5前処理後α2コート培養により細胞外環境を再現

Advantages

  • 培養した筋衛星細胞は未分化性・再生能力が高いことをマウス・ヒトで確認済。
  • 使用されるラミニンはすべて市販品で対応可能。

Background and Technology

骨格筋の組織幹細胞である筋衛星細胞は筋繊維と基底膜に挟まれるように存在し、通常は細胞周期の静止期で未分化状態を維持し、筋が損傷を受けると活性化され、増殖と分化を経て筋組織を修復・再生する。筋衛星細胞を生体組織から分離してマウス由来のマトリゲルを基材として用いて培養する方法はこれまで報告があるが、衛星細胞を未分化性を維持したまま増殖する培養技術は未確立であった。
本発明者らは、基底膜に発現するラミニン(LM)に注目し、筋衛星細胞の細胞外環境を模した最適な培養方法を開発した。筋衛星細胞はLMα3、α4、α5に覆われ、筋線維の基底膜ではLM2が高発現していることから、筋衛星細胞をこれらラミニンLMα3、α4、α5の活性E8断片混合物でプレインキュベートしたのちにラミニンα2をコートしたディッシュ上で培養することで、未分化のまま効率的に増殖させることに成功した。マウス/ヒトにおいて実際に移植された筋組織での再生能力も高いことが確認された。本技術で使用されるラミニン活性E8断片は、全て市販品で対応可能であり、骨格筋研究・創薬での利用が期待される。

Data

  • ヒトの衛星細胞をLM332-E8(α3)、LM411-E8(α4)、LM511-E8(α5)断片の混合物でプレインキュベーション後にLM211E8(α2)断片をコートしたディッシュで培養した結果、Pax7(筋衛星細胞マーカー)陽性細胞率はマトリゲル上で培養した場合よりも2倍高かった。
  • 免疫不全マウスの損傷した筋組織に本発明で培養したヒト筋衛星細胞を採取・培養し、移植したところ、マトリゲルコントロール群よりも有意に多くの筋線維が再生された。

Expectations

本技術を用いた筋衛星細胞の初代培養細胞の開発・製品化に興味のある企業、筋衛星細胞を用いたアッセイに興味がある製薬企業を探しています。本技術をベースにした骨格筋再生医療に関する共同研究も歓迎します。
研究者との面談による打合せも可能です。

Publications

Patents

特許第6916523号

Researchers

赤澤 智宏 教授 (順天堂大学 医学研究科 難治性疾患診断・治療学)
関口 清俊 教授 (大阪大学 蛋白質研究所 マトリクソーム科学(ニッピ)寄附研究部門) 
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