新しい癌のPET診断薬とその高収率な合成方法

2024/05/22 11:17 - By Tech Manage

Advantages

  • 新しいPET診断薬の候補化合物:貴社パイプラインへの導入のご提案
  • 腫瘍細胞に高発現するアミノ酸トランスポーターLAT1特異的な化合物FAMTを改良
  • FAMTの腎臓集積の問題を解決。In vivoで、腫瘍への集積性の向上を確認
  • 新たな合成方法:収率が悪いとされる従来方法を打破。収量を大幅アップ
  • 既存のPET試薬合成装置を用いて合成できることを実証済み

Background and Technology

18F-FAMTは、がん細胞に特異的に発現しているL型アミノ酸トランスポーター1(LAT1)を標的としたPET診断プローブの一つである。18F-FAMTは、正常組織や良性腫瘍に蓄積せず悪性腫瘍にだけ集積する優れたプローブとされている。
しかし、18F-FAMTは腎臓に集積してしまうこと、また腫瘍からの洗い出しが早いという弱点があった。前者については、腎臓にある有機イオントランスポーターOAT1を介して、18F-FAMTが腎臓の尿細管へ取り込まれてしまうからといわれている。
大阪大学 医学部附属病院に所属の研究者らは、18F-FAMT を改良し、腎臓への集積を低減し腫瘍へ集積しやすくした、新たな化合物18F-FAMT-OMe を開発した(右図)。18F-FAMT-OMe は、旧18F-FAMTのベンゼン環4位にあるOH基を、OMeに置換したもの(図の赤点線部)。OAT1との相互作用が抑えられたと考えられ、腎集積の低減ならびに腫瘍への集積を増大させることに成功した(下部Data参照)。
また、この新開発の18F-FAMT-OMeは、合成収率が低いという旧18F-FAMTの問題も解決した。18F-FAMTは18F-F2ガスによる標識合成で製造されるが、18F-F2ガス自体の収量が低いため、そこから製造できる18F-FAMTも少量であることが問題であった。一方で、本技術は、カップリング反応を用いた新しい合成方法を採用した。これは、脱離基としてピナコールエステルを導入した標識前駆体と18F-フッ化水素(18F-HF)との合成であり、高収量で新化合物18F-FAMT-OMeを得られる、画期的な合成経路である。さらにこの経路は、既存のPET試薬合成装置を用いて可能であり、導入ハードルが低いと期待される。

Data

  • ヒト膠芽腫細胞(U-87MG)とラット脳神経膠腫細胞(C6 Glioma cell)を移植したモデルマウスに本技術18F-FAMT-OMeを投与し、腫瘍への集積性を調べた。旧技術18F-FAMTでは腫瘍への集積性が低いが、本技術18F-FAMT-OMeは腫瘍への集積性が格段に向上した(下図)。

Expectations

  • 本技術18F-FAMT-OMeを導入し、PETプローブとして開発したい企業を探しています。
  • 本技術は、既にin vivoで高い腫瘍集積性が確認されているとともに、既存のPET試薬合成装置で合成できることがわかっているため、非常に早く市場投入に到達できると期待します。
  • 開発者らは、放射線医学の専門家であり、企業での開発に必要な情報や知識を、共同研究や知財に関する契約(実施許諾契約)を通して、提供する用意があります。

テックマネッジ株式会社は、大阪大学からの委託により、本技術のライセンス導入による製品化・実用化をご検討いただける企業を探しています。大阪大学との秘密保持契約の締結による未公開データ等の開示の他、本発明者とのご面談も可能です。ご希望等ございましたらお気軽に弊社へお尋ねください。

Patents

WO2023/063154 A1(PCT/JP2022/037004)

Researchers

渡部 直史 (大阪大学大学院医学系研究科)
仲 定宏 (大阪大学医学部附属病院)


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