自家受精による魚類の効率的品種改良

2021/09/10 18:50 By Tech Manage

foxl3発現を抑制した雌魚に受精可能な卵子と精子を作らせ、
さらに雄性化剤を投与することにより自家受精させ自家受精卵を作出する。

Advantages

  • 養殖魚・観賞魚の有用形質の固定が容易であり、品種改良の効率を向上できる
  • 特に食用養殖魚に多い性転換魚において生産性を向上できる
  • 世界で初めての脊椎動物における人工自家受精技術である

Background and Technology

 マダイ・ブリ・マグロ等の食用養殖魚やメダカ等の観賞魚において、成長速度・病気抵抗性・美味しさ・審美性等の改善のために品種改良がなされている。
通常の品種改良は他家交配によるため、有用形質が見出されてもそれが固定された品種の作出には手間や時間を要する。
特に食用養殖魚の多くは性転換魚であり、特にマダイは発生時は全て雌で3年後に雄に性転換する。
そのため成魚から精子を採取するには3年以上の年月と大きな飼育施設が必要になる。そのため幼魚から精子を採れるような技術や更には自家受精の技術が求められている。

 Forkhead-box Protein L3 (foxl3) 遺伝子はDNA結合性転写因子であり、生殖幹細胞が卵になるか精子になるかを決める遺伝子として知られている。
これまで我々はfoxl3欠損雌メダカの卵巣において卵の他に生殖上皮上に精子が形成されることを発見し報告している(Science (2015)349, 328-331)。

 今回、我々はfoxl3発現抑制された雌メダカに雄性化剤を投与することで、上記精子を卵巣腔に放出させて卵と自家受精させ、孵化させることに成功した。

Data

  • 作成した自家受精メダカから排卵卵33個のうち8個が受精卵であり2個が正常に孵化した。複数のメダカで再現性が確認された。

Expectations

  • 現在は、メダカにより自家受精卵作成・孵化を確認し、本技術のコンセプトを実証した段階。
  • 今後、外部パートナー(企業や水産試験場等)と協働して、本技術の効率の改善およびマダイやトラフグ等の養殖魚で自家受精の実証・開発を進め、養殖・品種改良において実用化したい。

Patents

国際特許出願(公開番号:WO2021/132205

Researchers

田中 実 教授(東海国立大学機構 名古屋大学 大学院理学研究科)


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